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2020.04.13

支え合う同人の力を見た「コミックマーケットC98の中止」

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス

 

 

コミックマーケット・・・同人文化にちょっとでも触れたことがある人なら誰でもその名を聞いたことがあるだろう、日本で開催される世界最大の同人誌即売会である。記念すべき第1回が行われた1975年以降、年2〜3回のペースで開かれ続け、2020年の5月には第98回目を迎える・・・はずであった。

 

 

しかし!世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス。1月には中国でパンデミックが発生し、2月ではアジア各地から世界中へ混乱が伝播した。もちろん日本も例外ではない。国民全体が一丸となって外出自粛を呼びかける世の中である。未曾有の事態・・・不謹慎ではあるが、この「未曾有(Mizou)」という単語。日本人なら誰でもおどろおどろしさを感じるのではないだろうか。

 

 

そして、当然のごとくコミックマーケットもその影響を受けた。第98回コミックマーケット(C98)の開催は、5月2日〜5月5日までを予定してたのである。強行することは、なかなか一般人層の理解を得にくい同人文化の衰退を意味し、そして偏見を加速させる一因にもなるのだ。そのため、コミックマーケット準備委員会は3月27日、開催中止を発表した。第1回の開催以来、様々な問題を抱えながらも、それを幾度となく乗り越え続けてきたコミックマーケットであるが、今回初めて中止に踏み切ったのである。

 

 

C98に見た同人文化の絆

 

 

この運営側の判断、正しかったのかは歴史が証明する・・・と言いたいところだが、すでに正しいと断言せずにはいられない。まず世論の問題。日本では東京を含む7つの都道府県に4月7日緊急事態宣言が発令された。その期間は5月6日まで。当然、東京で行われる予定だったC98の期間も含まれる。コミックマーケット運営側は、緊急事態宣言よりも早く中止を決定したことで、その先見性を世に示せたのではないだろうか。

 

 

そして、同人文化の絆をより強固なものにした。

 

 

まず参加者、特にサークル参加者が気になるところが「参加費」の返還問題である。参加希望の抽選に当選した場合、1サークルにつき、少なくとも1万円ほどの申し込み料が発生する。もちろん前払いなので、C98に参加予定だったサークルは支払い済みだろう。

 

 

この費用・・・中止だったとしても返ってこない。もちろん、讃歌契約書のようなものに「やべぇことがあって開催できない場合は、お金返せないよ〜」のような条文はあるのだが・・・SNSではというと・・・

 

 

「返金は希望しない!」

 

 

「運営頑張れ!」

 

 

「未来の開催のために!」

 

 

という声が続々と上がった。さらに、同人誌を扱う書店では委託料などを下げる、つまり本が売れた時の書店の取り分を少なくするなどの対応で各サークルを応援する働きが行われた。またサークス参加者などが記載されたC98の総合カタログ、すでに印刷が始まってしまっていたのだが、開催されなくても購入したいという人が続出。Amazonの3月における月間書籍ランキングで30位に輝いたのだ。

 

 

新型コロナウイルスによって生み出された中止という悲劇・・・しかし、タダでは転ばないのが同人たちのスゴイところ。同人文化の絆を強化し、C99へと歩んでいってほしい。

 




Writer

佐藤志郎

2010年に広告制作会社を立ち上げる。主要な取引先は通信販売会社であるため、得意分野はダイレクトレスポンス広告。


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