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2021.10.10

【同人誌専門印刷会社:しまや出版 代表取締役 小早川】宝物を作るお手伝いとしてできる限りの安心と品質を

 

 

しまや出版が同人誌専門印刷会社になったいきさつ

「同人誌を作る最後の1%を手伝わせてもらっています」と話すのは、同人誌専門の印刷会社『株式会社しまや出版』の社長である小早川さん。同人活動の原点といっても過言ではない同人誌。その印刷を多くの同人作家から任されており、全国から問合せが後を絶たない。

 

「うちが同人誌を手掛け始めたのは今から40数年前。コミックマーケットの第2回開催の時に作家さんから印刷の依頼を頂いて、それ以来同人誌の印刷所として関わり続けてきました。当時は文房具屋を営んでいて、小さな印刷機で封筒などの印刷をおいていたのですが、少部数の為一般的な印刷会社さんに依頼できない学生さんなどが『しまやなら同人誌の印刷をしてくれる』と口コミで広めてくれたようです。」

 

まさに同人文化の発展とともに歩んできたしまや出版さん。なんでも同社で扱う印刷物の99%が同人誌だそうだ。

 

「今でこそコミケを始めとした、いわゆるオタク文化って浸透してきていますが、数十年前は厳しい目で見られることもあったそうです。私は前職でビッグサイトの近くに勤務していて、コミケの長い列を傍から見ていて興味を持っていました。その為、しまや出版の業務を引き継ぐにあたって全く抵抗はありませんでした」

 

そう語る小早川さんは、義父であった当時の創業社長が急逝したことで、急きょしまや出版を継ぐことになったのだそうだ。

 

しまや出版さんは会社として、猫の保護活動も行っているそう。社内には「癒やし課」という猫や亀が所属する部署も存在!

 

 

 

同人活動へ対する理解はどれほどのもの?

とは言え、オタク文化に抵抗がないだけで「生粋のオタクではない」と語る小早川さん。同人誌印刷会社の社長として、同人誌に対して、一体どんな想いをお持ちなのだろう。

 

「同人誌は想いとパワーのかたまり・・・でしょうか。同人誌印刷を行うって、企業としての印刷会社と、個人の関係になるじゃないですか。その中で、どれほど個人、作家さんの気持ちに寄り添えるかと、こだわりが大切だと思っています。ただ単純に印刷をするということだけだったら印刷機械さえあれば、どこでもできちゃうんですね。でも同人誌の場合、一般的な企業の印刷物とは違って、同人作家だからこその想い、こだわりってあるはずなんですよ。印刷の方法、色の出方、紙の種類、様々な装丁など。そういった個人個人の想いや要望をくみ取る事が大事だと思っています。そしてその想いにしっかり応えて、イメージした同人誌に近づける印刷・製本をしていく。その為にも、ネットを介すだけの関係で終わらせず、直接電話でお話を聞いたり、納品時にイベント会場に挨拶に行ってお話すること多々あるんですよ。」

 

熱い・・・熱すぎる。実際、営利企業として正しいのかわからない。が・・・モノ作りとしてはこれ以上ない答えではないだろうか。しかし、何度も言うが小早川さんはオタクじゃない。本当にオタクの気持ちなんてわかるの・・・?と穿った見方もしてしまう。

 

 

「そう、私は生粋のオタクじゃなかったので。同人誌印刷会社の社長になってもどこかに後ろめたさというかコンプレックスを抱いていました。それを払拭すべく、自分でも同人誌を作ってコミケにも個人サークルとして参加しました。今まで7回参加しています。ただ僕はマンガも描けないし、小説も無理・・・そこで自分の得意分野としての「町工場」の本を創りました。いろいろな工場に行って写真を撮って説明するという町工場本です。意外と反響もあって、毎回100部ほど頒布させていただいていたんですよ」

 

オタクじゃない・・・?いや、そこまで足を突っ込めば・・・同人印刷を体感するために行動すれば・・・それは立派なオタクだ!!

 

「同人作家さんたちの仲間に入れたのかはわからないですけど、しまや出版の社長は自分で同人誌作って参加してるってSNSで取り上げてもらったりもしたので、ちょっとは認めてもらえたのかな。ただ、まだまだコンプレックスのかたまりですけどね(笑)」

 

しまや出版さん創立50周年を記念する本と、小早川さんが作った同人誌

 

 

 

社長だけではない、全社員が理念を共有

「社長、ついていきます!!」と言いたくなってしまうほどの同人誌印刷への想いと取り組みを聞かせてもらった我々。やはり、しまや出版さんという会社としての仕事ぶりも信頼のひとことである。

 

「私たちは、『はじめての方“にも”やさしい同人誌専門印刷所』というスローガンを掲げています。同人誌創りに慣れていない時って、とても不安だと思うんです。そんな方にも安心して同人誌創りを楽しんでもらえるように日々頑張っています。作家さんにとっては想いのこもった原稿です。私たちが印刷・製本して、その原稿を宝物にしていくわけです。とても重要な任務を背負っているんですね。だからこそ、作家さんには安心してお任せいただけるように、サービスにも品質にもこだわりを持って運営しています。“にも”ってなってますが、当然常連さん“にも”にもやさしいですよ」

 

同人誌印刷を全てワンストップで行える機器が所狭しと並んでいる

 

しまや出版の印刷工場内に入っても、それがスタッフさんたちに浸透しているのがハッキリと感じられる。同人誌という一般社会から見たらアンダーグラウンドと見なされることもある印刷物、中には成人向けのものもあるだろう。そんな中、一人ひとりが明るく真剣な眼差しで業務に向き合っているのだ。

 

でっかい印刷機が何台も置かれていた

 

「作家さんとの信頼関係を失ったら終わりですからね。しまや出版に頼めば安心できる!という今まで積み上げてきた想いを無駄にしてはいけません。品質を維持する為、さらに工場する為にサービスや機械への投資も続けていきます。ただ正直なところ、うちは決して安い印刷所ではありません。そこはごめんなさい。それ以上に、作家さんから頂いた原稿がご納得いく宝物になるように常に最善を尽くし続けていきます。」

 

紙という媒体はインターネットの普及により減少の一途をたどっている。しかし、しまや出版さんには印刷の依頼が毎日のように届いている。やはりこの姿勢こそが商売の基本なのだろう。

 

「新たに同人活動を始める書き手さん、サークルさんがどんどん増えて、同人活動の裾野が広がりつづけてほしいと思っています。同人誌を創る方がいる限りは、長年コミックマーケットに関わってきた会社として、同人誌専門の老舗印刷所としての責務として、しまや出版は作家さんをバックアップし続けていきます」

 

印刷についてを丁寧に説明してくれる小早川さん

 

 

●しまや出版

 

Twitter:@ShimayaTokyo

 

webサイト:https://www.shimaya.net

 

 

 




Writer

佐藤志郎

2010年に広告制作会社を立ち上げる。主要な取引先は通信販売会社であるため、得意分野はダイレクトレスポンス広告。


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