2022.06.23
【映像クリエイター:野田涼平(YOFUKASHI)】実写でもアニメーションでもない「現実を拡張する映像」とは?【yama新曲のMV制作の現場に独占密着】
オタクな同志たちにはもはや説明不要だろう。AR・・・つまり拡張現実ってやつだ。簡単に説明するなら、現実世界に仮想世界を重ね合わせる技術のことである。スマートフォンなんかでも簡単に映し出すことができ、その画面を覗き込むだけでリアルとヴァーチャルの狭間に飛び込めると話題になった。
一種の錯覚でもあり、没入でもある。これに音楽が乗ったとしたら・・・トランス状態一直線だ。
そんなミュージックビデオ(以下:MV)をはじめとしてあらゆるクリエイティブを創り上げるクリエイター集団が存在する。YOFUKASHIだ。
YOFUKASHIの手がけたMVのジャケット
信頼し合った少数精鋭だからこそ解釈が共有できる
「ディレクターとしてどんな映像・作品にしたいのかをまずは考えて、コンテを描いて、それに合うアニメーションだったりのクリエイターさんに依頼するようにしています」
つまり音楽に合わせたMVのイメージが頭の中にあって、実際に映像というカタチにするパートナーを募るというわけだ。
アニメーター担当の作業風景
「今回のプロジェクトでアニメーションを担当してくれている方は、SNSで知り合ったんですよ」
え??プロのミュージシャンのMVって、大企業の映像制作の大部隊みたいな方々が動いてるんじゃ・・・?
「そういったケースも勿論ありますが、最近はTwitterとかInstagramに自分の作品をアップされているクリエイターさんもたくさんいらっしゃいますし、その繋がりの中でお互いがリスペクトし合って一緒に作品を作るって感じなんです。だからやりやすいですし、イメージを伝えれば想像通りのものをいただけるんです」
なるほど、人が多ければ多いほど方向性が定まらないこともあるし、まさに野田さんを中心とした精鋭部隊だ。
アニメと実写が合成されたMVの一コマ
「精鋭部隊というより仲間といった感じですね。1つのMVを作るとして、その曲の解釈だったり熱量、概念・・・そういうものをクリエイティブのレベルで共有しやすいという利点もありますね」
実写パートの撮影
もはや音楽は「観る」時代になっている
そもそもだ、曲を聴いてまだ見ぬMVを思い浮かべ撮るというのは、曲への理解も重要になってくるのだろう。
「自分の場合は、歌詞をそのままストレートに映像にするような受け取り方はしないように心がけています。例えば、恋愛の歌であってもストレートにラブストーリーを描かないとか・・・」
確かに、そのまま歌詞をトレースするならば、ドラマを観ていたっていい。曲に込められた裏側やメッセージの意味を如何にして「拡張」させるのかが腕の見せ所なのである。つまり、センスだ!!
yama『桃源郷』MV-0-25-screenshot
「そう、YouTubeだったりTikTokが一般的になって、映像を楽しむ機会が増えました。音楽も同じなんです。映像ありきで音楽を聴くのが当たり前の時代になってきたんですよ」
言われてみれば「この曲、ついつい観ちゃう」ということが増えた。聴くではない、音楽は「観る」ものへと進化していってるのである。
yama『桃源郷』MV-1-25-screenshot
「特にアニメーション、2次元と3次元の融合は、最近のトレンドだと思います。リアルの世界で2Dキャラクターが動いて物語を作り出すのは、映像としてシンプルに映えますよね」
まさにその通りなのだ。試聴する側からしてみれば、圧倒的に引き込まれる。と言っても、MVそのものが「ただアニメーションを組み合わせているもの」であれば、流し見で終わってしまったであろう。曲の良し悪しに加えて、MVの作り手の作家性が最も重要なのである。
「ありがとうございます。そうですね、ハイブリッドだから単純におもしろいだけじゃなく、作家性も求められている印象ですね。単に作る技術だけじゃなく、アート性とかカルチャーとしての表現力も大切ではないでしょうか」
yama『桃源郷』MV-1-38-screenshot
アートとは表現であり、創造だ。有り体な言葉で申し訳ないが、閃きも鍵となるのだろう。野田さんなりのアートを創り上げるために、どれほどの時間を費やしているのだろう。
「う~ん・・・だいたいの感覚ですが、1ヶ月から1ヶ月半くらいですかね」
マジか・・・素人考えだと、ものすごいスピーディに感じる。
「アニメーションが少ないリリックビデオであれば、1週間くらいで仕上がることもありますね。曲を聴いた瞬間にイメージが湧くこともあるんですが、自分はギリギリで出てくるモノが好きかもしれないです。散歩をしながら曲を聴き続けてメモを取って、それでイメージしたものを持ち帰って揉んで・・・という流れが多いですね」
おぉ・・・まさに曲をヒントに新しい世界を生み出すアーティストだ。
yama『桃源郷』MV-2-32-screenshot
3D+2Dだからこその展開
新進気鋭のクリエイターYOFUKASHIが創り上げる「現実+α」のようなMVは、これから当たり前になっていくのだろうか。
「2Dハイブリッドは増えていくと思いますよ。クリエイター目線から見ても、自分自身でやりたい!って思ったジャンルでもありますし、もちろん流行もあります。また、MVなのにアニメーションを組み合わせることで音楽発でIP化(Intellectual Property:アイデアや創作物などに対する知的財産)にも繋がるのでコンテンツとして面白いんじゃないかと思います」
yama『桃源郷』MV-2-33-screenshot
おっしゃる通りだ。MVに登場するオリジナルの2Dキャラクターは、それだけで一つの価値である。楽曲が一つの軸となるのかもしれないが、野田組(仮)が手掛けるMVにおいては映像やイラストも主役。まさにポップカルチャーの融合といっても過言ではない。
「だからこそMV制作の話をいただけるのであれば、どんどんチャレンジしたいですし、自分なりに面白いクリエイティブを発信していけたらと思います」
3Dと2Dを合わせることで、現実と楽曲への解釈を拡張するYOFUKASHI。我々が想像もできない世界をこれからも見せていってほしい。
●YOFUKASHI:野田涼平
Twitter:@_noontaan
webサイト:https://noooontan.tumblr.com
●YOFUKASHI:ハノ
Twitter:@8no_cha_n
webサイト:https://8no-chan.tumblr.com/
●yama
『桃源郷』MV: https://www.youtube.com/watch?v=XrUCwI7xyhQ
ダウンロード/ストリーミング: https://yama.lnk.to/TVAYalAY
個人クリエイター達によるミュージックビデオは他にもこんなに!
●コラージュというアニメーション技法で作られたMV
oxygen/TOOBOE
https://www.youtube.com/watch?v=jzj0Bg8KP28
●実写×アニメの技法で新境地を切り拓いたMV
心臓/TOOBOE
https://www.youtube.com/watch?v=pjkOB8rXs6E
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Writer
佐藤志郎
2010年に広告制作会社を立ち上げる。主要な取引先は通信販売会社であるため、得意分野はダイレクトレスポンス広告。