2023.08.18
【アニメ道_Vol.02】アニメ制作のグローバル化が加速【アニメーター:勝又聖人】
アニメの深淵をのぞく時、深淵もまたこちらを覗いているのだ—
※ニーチェの引用(小川恭平)
タイトル読んで「え、まじ!?」と思った方、なかなかのアニメフリーク。
この名を目にして、アニメ業界では振り返らない人はいないといっても過言ではない、新進気鋭のアニメーター。まさに深淵、まさに中核。この出会いは偶然か、はたまたニーチェの言うように必然であるのか。
なんとなんと、話題のアニメ『五等分の花嫁 ∬』や『僕の心のヤバいやつ』などでキャラクターデザインや総作画監督を担当されている勝又聖人さんが、アニメ制作についていろいろ教えてくださいましたよ!!
ご本人を前にしてファン心全開
「勝又さんが総作画監督された2期からは、推し変確定でございました!」
などなど、本来は「アニメ制作とは如何に!?」という内容を聞くはずが、ただのいちアニメファンとしてのコメントしか出てこない私、小川でございます。
とは言えですね、総作画監督とかキャラクターデザインとか、文字は目にしたことがあるけれど実際どんなことをされているのか、素人ではなかなかわからないもの。そこで、まずはアニメーターってどんな仕事?って質問を投げかけてみることに。
「まずアニメーションとは?ということからお話しさせてください。これは一つのコンテンツ、お話を表現する手法の一つ。原作からお借りした絵を元にして、アニメーションとして成り立たせるための情報を取捨選択していきます。そして、例えばキャラクターの動きや画面内に存在するモノを描いたり、構成していく人たちのことを主にアニメーターと呼んでいますね」
なるほど・・・つまり、ざっくり簡単に言えば、絵を動かすことに関わっている人がアニメーター!と言うわけですな。
「もちろん、その中に役割はいろいろあります。原画マンや動画マン、作画監督や総作画監督と呼ばれる人たちですね。実際は、もっと細かく分かれるんですが、大きくこの4つだと思います」
アニメのイラストを描く勝又さん
アニメーターへの道
アニメ制作において、どんな役割があるのかはなんとなく理解した私。それにしてもアニメーターの皆さん、どういった経緯でアニメ業界に飛び込んでいくのだろう。
「多くの人はアニメが好きだからだと思います。アニメの何かしらに携わりたいって想いが強いからこそ、アニメーターは最初に目指されることの多い仕事ですね。僕の場合は、もともとイラストを描くのが好きで、もっと絵がうまくなりたいという思いから絵を描く仕事でそれが満たせるのが、アニメ制作だと思い、なおかつ、自分が表現しやすいと感じたのでアニメ業界を選びました」」
好きこそものの上手なれとは言ったものの、イラストなんて全く描けず棒人間さえ危うい私にとっては、なかなかにハードルが高い業界な印象です。
「実はそんなことはないんですよ。例えば動画マンは、原画マンが描いたコマを動きとして繋げる役割です。その中でも口の動きだけ描くとか、眼球、視点の移動だけだったりなど、そういった簡単な部分だけを描く、初歩から始められるポジションもあります」
ほおおおお、それならなんとか私でも・・・!
「動画マンの仕事としてはさっきお伝えした簡単なことだけではなく、例えば、キャラクターの横顔が正面になるというシーンを想像してみてください。徐々に隠れていた目が振り向くに連れて見えてくるじゃないですか。そういったキャラクターの動きの過程の複雑な動きを描くのも動画マンの仕事としてあります。なので、簡単な作業から技術が必要な場合まで幅広く請け負います。つまり、動画マンとして段階を踏んで行く中で、(総作画監督から原画マンなどの)上手な方の絵を見たり、修正を入れてもらったりと、仕事をしながら絵を学べるので素晴らしい環境だと僕は思っています」
それはアニメや描くことが好きでも自信がない・・・という人にとって、願ったり叶ったり!!ってことはだ、アニメを視聴しててちょっと構図や表情に「あれ?」という違和感を持った時、駆け出し動画マンさんが担当されていることもあるというわけですね。
「かもしれませんね(笑)」
勝又さんの制作環境。まさかこんなにシンプルな仕事場とは驚きだ
日本だけではまかないきれないアニメ制作のグローバル化
「ちなみにこうした動画マンの作業や色を塗る仕上げ作業などは、今現在だと日本国内よりも海外の制作会社に発注することが多いと制作さんなどから伺っています」
と勝又さんはちょっとした裏話を聞かせてくれました。
「もちろん日本の会社だけで完結させる作品もありますが、海外のアニメ制作会社と親密な関係を築きつつ育てていこうというのが主流になってきているそうです。私見ですが、海外の方って、勤勉な方が多く、練習などもしっかりとしていて、仕事においては、繰り返し繰り返し出されるリテイクなどにもめげずに付き合い続けてくれる方が多い印象が有ります。反復することでスキルアップにも繋がるし、動画マンとしての経験を礎に、原画など上位のポジションを任されている方も最近は多いと聞きます」
また、日本国内でアニメ制作に携わる人材減少も原因の一つだと言います。
「先にもお話しましたが、海外の方は、熱意を持って本心でアニメに関わりたい!と、この業界に飛び込んできてくれる人がたくさんいらっしゃいます。当然、日本だってそうなのですが、日本では最近はアニメーター志望の方も減少しているらしく、また、そもそも人口的に絶対数が違いますしね」
ジャパニメーションドリームを実現させよう!
日本のアニメ制作において、間違いなくトップランナーの一人である勝又さんが話すアニメ制作のグローバル化。これを聞いて、海外の日本アニメファンの方々もアニメ制作という仕事を身近に感じてくれたら嬉しい。
「日本国内でも、実は海外出身で活躍されているアニメーターってたくさんいらっしゃるんですよ」
とも勝又さんは言います。
「海外で動画マンとしての仕事を学んで、熱意で日本に来ちゃいましたとか実際ありますね。それに、海外の方ならではの感性で、日本人では思いつかないような独創的なデザインを生み出したり、フィジカル的な面、例えば枚数をこなすスピードがとても早かったり、そんな部分は強味になると思います。もちろん絵が上手に越したことはないです」
海外と日本・・・話す言語に壁があったとしても、アニメへの熱意と自身の技術でそれは乗り越えられるそうだ。
「世界同時配信が可能な現在においては、日本だけではなく、自分の携わった作品が世界中の人々の印象や記憶として残り続けると思って僕はアニメーターをしています。アニメーターを目指す方々は、この喜び、やりがいをぜひ感じてみてほしいですね」
日本のアニメが好きならば、ぜひ海外の方たちにも飛び込んできてほしいアニメ制作業界。そこにはまだまだジャパニメーションドリームが埋まっているぞ!!
●勝又聖人(がんこchan)
Twitter:@shashaneko123
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Writer
小川恭平