2021.07.31
【コスプレイヤー:橘沙華】自家発電し続けた古参オタクの強さ
ないものばかりだった時代の楽しみ
オタクには歴史がある・・・同時にコスプレにも歴史はある。
自ら古参勢だと話すのは橘沙華さん、コスプレ歴「ぅん十年」のコスプレイヤーさんだ。
「こんなおばさんで、大丈夫ですか(笑)?」
と、やや遠慮がちではあるものの・・・いやいや古参勢のチカラを出し惜しまないでほしい。オタクと言えば、好きなものにはノンストップ。話し始めたら止まらない。
【Fate/Grand Order】カーミラ
「まぁ、世代が変われば考え方も変わるので、古参の話ですが・・・」
と話し始めた橘沙華さん。
「80年代~90年代のオタクって、自分で作品を補完していたんですよ。自家発電って言い方もするんですけどね、不透明な部分を自分なりに作り上げていったんです。それがコスプレだったりを始めとする同人活動だった」
なるほど・・・よく考えれば今の時代、公式を始め公式ライセンスなどで一つの作品が(言い方は悪いかもしれないが)骨の髄まで商品として販売されていると言えるだろう。
「2000年代に入ってからでしょうかね。衣装もウィッグも「これを着れば、かぶればこのキャラクターになれる」というのが売っていますし、それに公式が設定資料やグッズもいくらでも出ているじゃないですか」
そう、欲しいものは買える。もともと同人活動とは、商業とは一線を画すものだった。好きを体現する、作品にする・・・しかし現代では、それすらも商業ベースで動いているのかもしれない。それがいいことなのか悪いことなのかは、人それぞれ受け取り方によるだろう。
「だからコスプレの間口って、私が始めた当時よりもずっと広くなっていると思うんです。ただ、その分ライトになったかもしれません。例えば、ウィッグはコスプレという文化が本当に始まった当時、引っ越し紐みたいなものをブラシでばらして作っていたそうなんですね。でも、今ではどんな色のものだって販売されている。だから、手放すのも早くなってしまうってこともありますよね」
ブームが消費され、新しいブームが作られていく。去年、爆発的ヒットを飛ばしたアニメやマンガでさえ、今年に入ればその作品のコスプレイヤーを見かけることも少なくなっていく。
【GANGSTA】アレックス・ベネデット
【GANGSTA】アレックス・ベネデット
「古参勢の特徴で私もそうなんですが、自家発電して自分で補完してきた作品って飽きないんですよ。気に入った作品は流行とか考えずに何度でもやる。やりきってやりきって、空っぽになるまでやって、やっっっと次行こうかってなるんです」
【NARUTO】大蛇丸
【NARUTO】暗部 カカシ
引退を考え、自分を振り返った結果・・・
そんな橘沙華さんだが、コスプレイヤーを引退することも考えたことがあるそうだ。
「実はですね、結婚して出産・・・となった時に、やめようかと思っていたんです。昔はそういう文化もありましたしね。子供の手が離れたら造形とか衣装作ったりだけでもいいかなぁなんて」
今までオタクどっぷりだった橘沙華さん、人生の中で初めて自分のオタク活動を振り返るきっかけになったのだろう。
【HELLSING】セラス・ヴィクトリア
【HELLSING】セラス・ヴィクトリア
「自分が培ってきたもの、考えてきたこと、学んできた経験をアウトプットし続けた結果・・・オタクの原点はどこかなって顧みたんですよ。自分の好きな本とか、映画とかいろんな作品を見返したりして、改めてインプットして・・・その結果、まだやめない!まだやりたい!って思えたんです」
そして出産・子育てによる休止明けに挑戦したのがFate/Grand Orderのカーミラのコスプレ・・・だけではなく仮面の造形だ。
【KOF】アッシュ・クリムゾン(赤い服)
【KOF】アッシュ・クリムゾン
「私の造形の師匠にアドバイスをいただきながら、なんとか作り上げました。その中で印象に残った言葉があるんです。「公式は本物・・・でも本物はウソ」って。例えばアニメって、場面のアングルによってモノの形が違うんですよ。3Dでモデリングすると、その通りにならないんです。だから、まずは自分の好きなお顔立ちにして、そこから削ったり盛ったりします。その結果、ウソが本物になる。よく、好きこそ物の上手なれって言うじゃないですか。私、中学高校の時、美術の成績は2でしたけどね(笑)。それでもここまで作れるようになりました!」
そう、二次元の世界を三次元に補完するのは、現実的に難しいもの。その塩梅こそがオリジナリティにつながるのだろう。
【東京喰種】次郎(青いパーカー)(万丈/立花月華)
「コスプレって、原作通りに原作に忠実に、を目指すほど3次元としても2次元としても違和感を感じるようになってしまいますよね。そこの落とし所が2.5次元だと思うんです。3次元にはできない2次元の世界を、自分らしさを何%入れていくかがオリジナリティですね」
おっしゃる通り!そして「自分らしさ」こそが同人活動であり、醍醐味だ。
【BLACKLAGOON】仙鶴(シェンフォア/チャイナドレス)
【BLACKLAGOON】仙鶴(シェンフォア/チャイナドレス)
【BLACKLAGOON】仙鶴(シェンフォア/チャイナドレス)
【BLACKLAGOON】仙鶴(シェンフォア)
【BLACKLAGOON】レベッカ・リー
「これからは海外にも目を向けていきたいですね。あちらのコスプレイヤーさんは、なにもない中でどう活動するか、どうアレンジするか、私たち日本人がどこかに置いてきてしまったものを持っている気がするんです。オタクって卒業できないですからね」
冒頭の橘沙華さんの言葉に戻るが、世代が変われば考え方も変わる・・・
しかし「好き」という気持ちだけは不変のものだ。これからもオタクであることを一生誇りとして活動していってほしい。
●橘沙華
Twitter:@orcaNEXT24
●Petite boutique d’armes(小さな武器屋)
Twitter:@ArmesPetite
オリジナル ポートレート
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Writer
佐藤志郎
2010年に広告制作会社を立ち上げる。主要な取引先は通信販売会社であるため、得意分野はダイレクトレスポンス広告。