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2021.09.11

【イラストレーター:鹿間そよ子】自分なりの美しい世界を多くの人に届けたい

 

 

アート風のイラストを描くようになったきっかけは?

これはアートだ。今回インタビューを受けてくれた鹿間そよ子さんのイラストを拝見した時、絵画を見ているかのような感覚に陥った。

 

「そうですね、もともとはオタクっぽい絵を描くのも好きだったんですが、世界的なイラストレーターさんとかの造形を見ているうちに、自分なりにそれを参考に突き詰めていった結果、アート風のイラストを描くようになりました」

 

 

御神巡行(ごしんじゅんこう)』
五行(万物が成り立つための5種類の元素)を司る者が龍神を従えて世界を見て回る様。この特徴的なタイトルは、絵に描かれている様子を表し、耳触りが良い音や目で「文字」を見た時にも意図が伝わるようにと付けられたそう。
https://www.pixiv.net/artworks/23498336

 

そのきっかけとなったのが、就職した時だったそう。

 

「以前勤めていた会社で、DTP(DeskTop Publishing)デザイナーをさせてもらっていたんです。今でこそ、雑誌やテレビCMとかでオタク絵が使われるようになりましたが、その頃はまだまだ受け入れてもらえなかったんですね。そこで、デザインにも使えるイラストをって模索した結果なんです」

 

しかし、なかなか採用されることがなく、趣味に活かして描き続ける日々を送っていた鹿間さん。

 

アート絵だけはなく、こうしたファンタジーでアニメ・マンガ調のイラストも描く

 

 

自分の世界が認められた日

転機が訪れたのは、2009年『桜 Exhibition』という公募イラスト展覧会。

 

「知人が主催の1人だったので、応募させてもらったんです。桜のイラストをテーマに描くんですが、1年目に準大賞をいただくことができました。その後も、翌年・翌々年と大賞をもらえて・・・私の絵が受け入れられるようになったんだって感じましたね」

 

左:『sakura-day-』
右:『sakura-night-』
公募展「桜Exhibition 2009」参加作品。
お昼にお弁当を食べながら過ごす和やかなお花見と、夜の酒宴を伴った妖艶なお花見をイメージして描かれている。見事、準大賞を受賞。
https://2009.sakura-ex.info/winner.htm

 

アートとは、常に時代の先を走るものである。やっと世界が鹿間さんに追いついてきたということだろうか。

 

「ただ、それでもアートっぽい絵は仕事になりにくいのですよね(笑)。今の時代、オタク絵の方が、カードゲームの絵柄の依頼もありますし、需要はあるのかもしれません」

 

『清鳴散花・巡命謳華』
公募展「桜Exhibition 2010」参加作品。
タイトルは「生命賛歌」「人生謳歌」に似た語感から自ら生み出した造語。
雄鶏・雌鳥をモチーフに、桜の花が潔く散る様と毎年繰り返し咲く様を重ねて、「命を賭して護る者」「命を産み育む者」を描いている。
鹿間さん初の大賞を受賞。
http://2010.sakura-ex.info/winner.htm

 

 

 

気持ちいい線を意識して美しい造形を描く

そんな鹿間さんだが、イラストを描き始めたのはいつの頃からだったのだろう。

 

「それこそ幼稚園の頃から描いていましたよ。お姫様だったり、学生時代はアニメの絵だったり。私、自分の描いた絵を人に見てもらうのが好きなんです。特に二次創作よりもオリジナル。私の世界を見て!!って思っちゃいますね(笑)。それで見てくれた人が「うまい!」って言ってくれたら私もふふっってなっちゃいますし、絵を見てくれた人が喜んでくれるなら、もっと素晴らしいことじゃないですか。みんなが喜んでくれる絵を描きたいって人はイラストレーターに向いていると思いますよ」

 

なるほど、鹿間さんがイラストを描き続けた原動力こそ、自分の考える美しい世界を共有できることの喜びなのだろう。

 

『さくらのひめかみ』
公募展「桜Exhibition 2011」参加作品。
タイトルはコノハナサクヤヒメ(上)とコノハナチルヒメ(下)の二人を指すという意味でさくらのひめかみ(桜の姫神)。
両者は表裏一体でありどちらの存在も有ってこそこの世界が成り立つのだという考えを表現。
イラスト中に添えてある文章は「あまてらす ふしのいただき さくやこのはな」「ひとしれず ちるこのはなや みのりうれしき」となっている。
再び大賞を受賞した作品。
http://2011.sakura-ex.info/winner.htm

 

 

「そう、私はキレイなカタチが好き。気持ちいい線ってあると思うんですね。自分が描きたいこと自分なりに美しいと思う線に乗せて、自分のなりの意味を込めて描く。例えば桜なら、桜に対しての自分なりの解釈。ある意味、私なりの辞書のような感覚でしょうか」

 

イラストが辞書とは・・・これがアートの感覚なのだろうか。一枚の絵に意味を込めて伝える・・・なかなか簡単にできることではないだろう。しかし、鹿間さんのイラストを見ると、確かに伝わってくるから不思議なものである。

 

「私の唯一の能力が絵を描くってことだけ。見てくれた人にポジティブな感情を湧かせ続けたいんです」

 

左:『桜世』
右:『逢瀬』
公募展「桜Exhibition 2019」参加作品。
桜Ex開催から10周年のため、遠目で見て「1」と「0」に見える作品に仕上げている。
タイトルはどちらも「おうせ」と読む。展示会の性質上英語タイトルが必要で、この作品はローマ字表記ではなく『one』と『link』にしたとのこと。

 

 

 

ひと文字にもこだわることこそ、細部への美意識

鹿間さんのイラストを見ると、絵以外にも目に飛び込んでくるものがあることにお気づきだろうか。それは一枚に込められたタイトルである。

 

「イラストの題名は、描き終わった後に付けるようにしています。文字には意味だけではなくて、音や漢字だったら漢字の見た目も重視しますね。だから、海外向けに訳すのは難しかったりするかもしれません」

 

『花鬘』『羽鬘』
色が綺麗なイラストを描きたくて描いたものだそう。
鹿間さんの中では、アート絵とオタク絵の間と言う感じの画風とのこと。
https://www.pixiv.net/artworks/47056133

 

https://www.pixiv.net/artworks/47055892

 

造語が好きとも話す鹿間さんならではのワードセンス。現実的に直訳するのは不可能なのかもしれない。そこもまた、アートたる所以である。

 

 

 

若い世代に繋げていきたい経験

最後に、イラストレーターとしての目標を伺ってみた。

 

「若い時は、有名な賞をとって名を上げてって思っていました。焦りもありましたね。でも今は、そんなことを思わなくなったんです」

 

というと、どういうことだろうか。

 

いわゆるオタク絵もお手のモノだ!

 

「そういうものを目指しすぎると描くのが苦しくなってしまいますし、中には辞めてしまう人もいます。本来、イラストを描くって楽しいこと。もっともっと気楽でいた方が楽しいって思えるようになったんです。その楽しい中に自分なりの意味を込められて、それが人の目に止まって・・・褒めてもらえたら最高ですね(笑)。賞をとることにやっ気にならなくても、人生を楽しめるって気づいたんです」

 

なるほど、手段と目的がすり替わってしまっていては本末転倒である。

 

「それに、もう歳も歳ですから、若い世代に自分の持ってる知識だったり経験を繋げていくことも大切です。苦しい時の乗り越え方だったりも、経験したことがあるから言えるので。今はそれが自分の役目かな。・・・あっ、なんか崇高なこと言ってしまいましたが、普段はだらだらしているだけですからね!」

 

クトゥルフ神話TRPGシナリオアンソロジー表紙
『夜』

 

ハコオンナ・ドラマCDパッケージイラスト
http://ejingar.sakura.ne.jp/hakodcd/hakodcd00.htm

 

『雪割の花』
以前インタビューさせてもらった「しらたまゲームズ」の作品のアートワークの9割方は鹿間さんが担当されているそうだ。

 

だらだらしながら余計なプレッシャーを自分に与えずに、自分なりの絵を描き続ける鹿間さん。これからもご自身なりの美しい世界を多くの人に届けてほしい。

 

 

 

●鹿間そよ子

 

Twitter:@ss_sakura

 

pixiv:https://www.pixiv.net/users/29098

 

webサイト:http://www.soyoko.net

 




Writer

佐藤志郎

2010年に広告制作会社を立ち上げる。主要な取引先は通信販売会社であるため、得意分野はダイレクトレスポンス広告。


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