🇯🇵
🇯🇵

2020.08.07

【BLマンガ家:木の子ゆん】日本に来て学んだ、何よりも人間関係が大切だということを

 

それは何よりも幸せなことだ

突然ではあるが、まっっったくの私事です。完全なワタクシゴトです。

 

私、今年中学生になった娘がおりまして・・・先日ドライブに行ったわけです。「どう?中学の勉強むずかしい?」なんて当たり障りのない会話をしていたんですが・・・最近ハマっている趣味を教えてもらったところ・・・

 

「うち、ヲタだから~友達とそんな話ばっかりしてる~」とのこと。

 

ふむふむ、若い世代には大人気の大正浪漫鬼退治みたいなアニメやらマンガやらが好きなのか。「ふっ、その程度でヲタ名乗るとは・・・我が娘ながら片腹痛いぜ」

 

なんて思ってたんです。でも・・・聞こえてきた言葉に耳を疑う。

 

「たん・・・ぜん・・・カプ・・・」だとっ!?ま、まさか・・・齢12にしてその道へ進んでしまったというのか娘よっ!!

 

で、kwskkwskということで、父親の役目を果たすべく追求。すると完全に「BL」。ボーイズラヴにハマってらっしゃると・・・やべぇ。こいつぁやべぇ。ということで、人気BLマンガ家の木の子ゆん先生にご相談してみた。

 

先生!!My Daughterの道を正したいんです!!

 

「HAHAHA、それは放っておきましょう」

 

え??中1の女子ですよ?これから思春期真っ只中ですよ?好きな男子と教科書の見せ合いとかでキュンキュンな青春が待ってるんですよ?

 

「いいですか、その年齢でBLを知るというのはとても幸せなことなんです。何よりもいいことです。ただただ見守ってあげてください」

 

先生・・・先生に聞いた私が愚かでした。

 

木の子ゆん先生のお仕事部屋。大好きなキャラクターグッズに囲まれている。

 

マレーシア出身なのに日本で活躍中!その苦労とは?

木の子ゆん先生とお話していると、その流暢な言葉で錯覚してしまうが、実はマレーシア出身。今から15年ほど前、日本でマンガを描きたい!という想いから単身で訪日されたそうだ。

 

「もともと日本の少年マンガが大好きだったんです。ドラゴンボールとかですね。それで、自分でも描いてみようってチャレンジして、マレーシアの出版社に送ったんですよ。それがなんと、賞をとっちゃいまして・・・これが私の勘違いの始まりでした」

 

え?マンガを描き始めて順調に賞まで獲得して、それこそ実力の証明。何が勘違いなのだろう。

 

「マレーシアにはマンガの出版社は1つしかありませんでした。でも私は単純なのか、世界で通用する!日本でもプロになれる!って思っちゃったんですよ」

 

なるほど、日本とマレーシアのマンガ文化の違いも大きく関わっているのでしょう。

 

「日本の方にも私のマンガを読んでもらいたい!って気持ちで、日本に来ちゃいました。行動力がすごい!勇気がある!なんて言ってもらうこともありますが、ただバカだったのかもしれません(笑)」

 

マレーシアで賞を獲ったという木の子ゆん先生のデビュー作!

 

 

立ち塞がる言葉や文化の壁・・・そして法規の問題

日本語も全くわからなかった当時、まずは言葉だと日本語学校へ入学したそう。まずは日常会話レベルまで勉強勉強の毎日だ。

 

「学校といっても、社会で必要な語学レベルまで教えられるわけじゃないんです。言葉が通じるかどうか・・・小学生、いや幼稚園生くらいの会話程度まで。あとは日常の中で学んでいく必要があります。日本語ってとっても難しいです。例えば・・・私はマンガの翻訳などにも携わっていますが、日本語を外国語にするのは特に問題ないんです。その逆、外国語を日本語に変換するのが本当に大変ですね。キャラクターのセリフとか、日本語って言葉の幅がとっても広いですから」

 

なるほど・・・確かに我々日本人は何気なく使用している漢字にだっていくつも読み方があるし、言葉の言い回しの千差万別。確かに「どの日本語を選ぶべきか」という点で、外国の方が迷ってしまうのもうなずける。

 

海外でも日本のマンガは大人気!そしてBLも大人気!!

 

 

その言葉の芯は・・・いろんな意味で極太だ

日本でマンガ家になるという夢、少年漫画にかける熱い想い・・・でも、でも・・・なんでまたBLマンガ家に??

 

「もともと好きだったからですよ!いいですか?BLというのは、日本だけのものじゃないんです。マレーシアはもちろん、アメリカにも、世界中に人気のある分野です。そして今や隠すものでもない。書店に行けば少女コミックの隣にもライトなBLマンガが置いてある時代です。腐女子なんて言われますが、もはや特別なものではなく、ただ当たり前のこと。例えば成人男性誌。女性から見らたら赤面ものですし、ありえない設定とか人体の構造とかも目立ちますよね。でも、男性はそれがいい、それでいいって感じじゃないですか?BLもね、女性として見てそれでいいものなんです」

 

うっ・・・BLは一般的、BLは当たり前の文化・・・考えてみればそんな気がしないでもない。

 

「腐女子はどこにでもいます!!!!!」

 

ああああ・・・・説得力モノスゴイ。それにしても木の子ゆん先生は「腐女子」と言われることに抵抗はないのだろうか。

 

「はい、腐ってるとか言われることもありますが、全然気にしないですよ。腐女子ですし、人間としても腐ってますし(笑)」

 

全くもって潔い。

 

「でも、商業誌は仕事なので、いくら腐ってると言っても責任を持って描かなくちゃいけません。一人で仕事はできないですし、編集さんやアシスタントさんがいるからこそ筆を進められます。でも同人誌は、腐ってるの全開ですね!好きなものを好きなように描けるのがいいところです。かっこいい男子、美しい筋肉、そしてラヴラヴ感!!あ~・・・たまりません」

 

男らしさの中に美しい乙女らしさも併せ持つ、BLならではのイラスト。

 

 

いくら才能があっても一人じゃ何もできないということを伝えたい

木の子ゆん先生は、同じように日本でマンガ家になりたいという卵たちのサポートもしているそうだ。

 

「大きな夢を持つたくさんの子達と話をしてきました。日本で成功したい、マンガを描きたい。その夢はとても素晴らしいこと。でも、たとえ自分に才能があったとしても、絶対に一人で成功するなんてできないんです。言葉の壁、文化の違い・・・そして私は日本に帰化しましたが、訪日した時は外国人です。就労ビザ、芸術ビザなどの発行はどうしればいいのか。そんな問題が山程あります。私は日本に来て、本当に運が良かったのかもしれません。ありがたいことにたくさんの人に助けていただいて今があります。でも、私のように日本に来ても、夢破れたり、壁を乗り越えられずに帰国する人もたくさんいます。日本に来て日本語を学んで・・・お金をたくさんかけてもそれが無駄になってしまうことだって珍しくありません。それでも頑張りたい!日本で成功したい!という想いがあるなら、私と同じような人たちに協力をしてあげたいとも思います」

 

自身が苦労に苦労を重ねて、やっと今にたどり着いたからこその言葉だ。同人文化、マンガ文化は世界共通。しかし、国ごとに言葉も法律も違う。いつか本当の意味で「Doujin World」を創り上げたいと、我々も身が引き締まった。

 

 

 




Writer

佐藤志郎

2010年に広告制作会社を立ち上げる。主要な取引先は通信販売会社であるため、得意分野はダイレクトレスポンス広告。


  • 読み込み中...

Related Posts