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2020.10.30

初心者コスプレイヤー、イベント初参加の一日(後編)

前編はこちら

いよいよコスプレイベント初参加をキメた私。まずはこのイベントに何回か来たことがある友人と作戦タイムだ。

このイベント、建物の屋内ホールや屋外の広場、近くの街中の通りで撮影できるうえに、コスプレのまま入っていいゲームセンターや飲食店がいくつもあるらしい。ちょっと待って、レイヤーに優しすぎないか?とりあえず屋内ホールを散策、お昼を調達しがてら外を回ろうというプランに落ち着いた。

 

さて、ホールを見回すと、保育園の頃見ていた魔法少女アニメキャラと今期の最新アニメキャラがお喋りしているわ、人気絶頂のスマホゲームのキャラ達が2,30人集まって賑わっているわ、とにかく目の前の光景を理解するのに頭が追いつかない。自分以外のコスプレを生で見たことがなかったから当然なんだけどね。心配した友人が手を引いてホールの端に連れて行ってくれようとした時、私たちに近づく影がひとつ―

 

 

 

「すみません、お写真いいですか?」一眼レフを抱えた男性がおずおずと声をかけてきた。初対面の人にはコミュ障な私、もちろん固まる。撮影大丈夫?と尋ねる友人にうなずくことしかできない。ま、まさか写真をお願いされるなんて思ってなかったよ…!あれよあれよという間にホール各所に置かれている撮影用背景パネル前で撮ってもらうことに。

 

こんな大きなレンズが向けられたら、表情もポーズもガチガチになっちゃう…と不安に駆られる私。でもそんな心配は1ミリもいらなかった。シャッター音と共に届く「いいですね~」「キマってますよ!」の声掛け、横で一緒にポーズをとる友人の笑顔、何よりこの瞬間『キャラになりきっている』って実感が、胸の奥からわくわくを連れてくる。そうだ、今の私は憧れの二次元アイドル。家で自撮りをしていた時の何倍も大好きな作品の一部になっている気がして、自然と口角が緩む。ああ、コスプレめっちゃ楽しい!!

 

 

 

カメラマンさんと別れ、ひとまず屋外へ。天気がいいこともあってか、広場は渋谷のスクランブル交差点みたいにごった返している。何十人もの撮影待ちの列をつくる美人レイヤーさんや身長より大きい武器を構えるレイヤーさんもいて、屋内よりもフリーダム。

 

ただただ圧倒されていると、バッグからTwitterの通知音が響いた。知り合いのレイヤーさんが会いたいとメッセージをくれたのだ。同じ広場にいるらしいのだが、なにせこの混雑、更に知り合いがコスプレしているキャラは辺りを見回すと何人も見つかるようなメジャーっぷり。まさしくリアル版ウォーリーをさがせ!である。正直無理ゲーでは?と一瞬弱気になる私を、いやいや画面の向こうの人に会うチャンスじゃん!と奮い立たせる。手がかりは自撮り写メでわかる顔立ちや衣装の雰囲気、写りこむ肩掛けバッグのベルト。友人に協力してもらいながらうろうろ歩き十数分、やっと巡り合うことができた。

 

知り合いはTwitterのノリよろしく気さくに話しかけてくれて、私のコミュ障メンタルはみるみる溶かされていった。ふと周りに目をやると、自分たちみたいに談笑したり自撮りをするレイヤーさんたちがあちこちにいる。一人ひとりから、会いたかった!会えてよかった!って気持ちが溢れて、オタクの同窓会みたいなあったかい空気が生まれているんだ。そんな気づきを噛みしめながら、心地よい空間に身を任せた。

 

 

そこから先は友人に連れられて、とにかくやること盛りだくさん。街中に繰り出して、コスイベ参加者定番のたい焼き屋に並んだり、ゲームセンターのプリクラやUFOキャッチャーで遊んだり。通いなれたアニメショップもコスプレ姿で歩くと全然違う場所に来たみたいだ。

 

あっという間に夕方になって、そろそろ更衣室に戻ろうかとタピオカ片手に通りを歩いていると、突然「おかーさん!AちゃんとBちゃんがいるー!!」と歓声が飛んできた。振り返ると、小さな女の子が目をキラキラさせている。私たちのコス作品は所謂「女児アニメ」。気づかれても不思議じゃないけど、キャラの名前で呼ばれると驚きと照れくささと嬉しさが込み上げてくる。うん、むずかゆいけど悪くない感じ…!お母さんに記念撮影を頼まれ、女の子を間に挟んでスマホの画面に収まる。ただキャラクターの格好をしてるだけでもこんなに喜んでくれる人がいるんだな、コスプレってすごい。

 

無事更衣室に到着。ウィッグを外すと疲れがどっと湧いてきた。「外でコスプレするって結構体力いるんだよ~」と、友人が液体のりの跡を付けた顔で笑う。一般人の格好に戻ってから、ファミレスで一緒に夕飯を食べながらまったりと余韻に浸った。

 

すっかり変身が解けた後だけど、わくわくした瞬間は胸の中にしっかり残ってる。コスプレイベントって、全身で表現した「好き」を間近で色んな人と分かち合える場所。そしてコスプレにもっと心が惹かれていく場所。初心者レイヤーの私なりに、そんな気がした一日だった。

 

 

 




Writer

KAMOMI

管理栄養士にしてコスプレイヤーの新人ライター。得意分野はコスプレを主とするオタク文化、食物・栄養関連。


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