【イラストレーター：キョー介】アートではなく商業として描く時のポイント

 

商業イラストレーターとアーティストの違い

イラストレーターと言っても、大きく分けて２種類。まず１つがアーティストだろう。自分の絵を追求し、作品をゼロから生み出し続ける芸術家だ。そして２つ目がクライアントの意向を汲み取りカタチにする商業ベースのイラストレーターである。

 

「私はアーティスト気質ではないですね」

 

と話すのはキョー介さん。いやいや、我々素人が見る限り、とっっってもキレイなアートって感じのイラストだと思うのですが・・・

 

ぼーかりおどPさんの楽曲「ファストジエンド」動画用イラスト

 

「私の場合、これはお仕事の話なんですけど、相手が何を求めているのかを聞いて、そこにこうしたらどう？とかこういう方がいいんじゃない？というようにアイデアを付け足していくタイプなんです。希望を聞いて、ラフを提出して、それを線画にして、着色する。相手が目指すところの距離感を詰めていくような感覚でしょうか。例えばボカロPのぼーかりおどPさんとは私が学生の頃からの付き合いになりますが、今でも楽曲イラストやCDのデザインをする際にも事前に希望を聞いたりしています(全部お任せのパターンもあります笑）」

 

うぅむ・・・なるほど。確かに「相手が望むイラストを描く」のか「完成したイラストレーター自身の絵がお金になる」のか、その差は大きいのかもしれない。

 

「アーティストさんは、０から１を生み出していますからね。それでお金を稼いでご飯を食べているというのは尊敬に値しますよ。商業イラストレーターであれば、絵ではなく技術が売り物ということもありますからね」

 

ぼーかりおどPさんのアルバム「リベリオンズ」CDジャケット用イラスト

 

 

 

自分の表現としての絵も捨てられない

そんなキョー介さんだが、自分自身の表現としての絵を描くことも忘れていない。

 

「商業ベースで、あくまでも仕事として週に何日間か働いて、他の日は自分の絵を見てくださった方からの依頼のために描くようにしています。大学を卒業してから、もともとデザイン・イラスト制作会社やゲーム会社に勤めていたんですよ。ただ、求められる絵だけではなくて、自分の絵と言えるものが描きたいって思い、今の仕事の仕方に落ち着きました」

 

lucifer （エルシャダイ展にて展示された作品）

 

プロでもアマチュアでも、やはり自分自身が「好き！！」と言える絵を描くことは、自分自身を保つことにもつながるのではないだろうか。

 

「絵を描くって、私にとってコミュニケーションのようなものでしたからね。ただ、自分の絵なんて言ってますが「これが私の絵なんだ！」ってなるまでは苦労しました」

 

キョー介さんのご自宅の制作環境！

 

 

自分の絵と言えるようになるまで

なんとキョー介さんは、イギリスの美術系大学を卒業している。言葉や文化の壁はもちろん、絵の壁にも当然ぶつかったようだ。

 

「最初は絵本向けの絵を書きたくて留学したんです。１～２年目は好きなように描きなさいという方針だったんで、ひたすら描き続けたんですよ。それこそ写実にも挑戦してみたり。でも、ある時担当の先生の1人に「あなたの絵を描いて」って言われてしまったんです。どうにも一部の向こうの方々から見ると、私がもともと描いていたマンガっぽい絵は全部同じに見えるようで。クラスメイトの中には変える必要ないよ！と言ってくれた子たちもいましたが、私の絵って何だろうと葛藤する良い機会となりました」

 

私たちは日本人だ。だから日本人の顔も見分けられるし、日本のマンガやアニメの絵の違いも感じ取れる。しかし、イギリス人からしてみたら日本人の顔は区別がつきにくいし、日本のアニメやアニメの絵も同じに見えてしまうのかもしれない。もちろん、逆もまたしかりである。

 

留学時代の絵本イラスト（大学の卒業制作作品）

 

「それで３年目に「好きなようにやってやる！！」って思って、吹っ切れて描いてみたんです。そしたら、突然評価してもらうことができました。海外の方から見ると日本っぽさを感じてもらえて、日本の方からは海外っぽいという意見をいただくこともあります」

 

まさに日本と海外の融合とも言えるキョー介さんのイラスト。留学したからこその結果だろう。

 

 

 

日本と海外におけるイラストの価値

「実は、留学していた時に海外の出版社から本のカバーデザインのお仕事をいただいたこともあるんです。まだ学生でキャリアも少ないはずなのに正直、え・・・こんなに！！？？と言えるほど羽振りが良かったのが印象的でした」

 

日本におけるイラストレーターの金銭的対価は決して高くないと言われることも多い。また「ゲームや本に名前を載せてあげるから」「あなたの宣伝にもなるから」と無償でイラスト制作を依頼する会社や個人もいると耳にする。

 

①【仕事絵】FFBE ブルース　

https://www.pixiv.net/artworks/79377267

 

②【仕事絵】戦国IXA千万の覇者　2020年イラストまとめ　

https://www.pixiv.net/artworks/89625453

 

③【概念礼装】サロメからあなたへ　

https://www.pixiv.net/artworks/79458912

　

 

「もしかすると、名前が載るなら・・・と、受けちゃう人もいると思うんです。私も実際経験がありますし。大変有難いことに現状お仕事をいただいているクライアント様とはとても良い信頼関係を築くことが出来ておりますが、幸運なケースだと思います。クールジャパンと言いつつ、実際に携わる人達は豊かになれないような現状は、なかなか歯がゆいですね。先日、海外の企業関係の方からもお話をいただく機会がありましたが、最初に提示された額が予想以上のものでSNSなどで聞き及んでいたとはいえ驚きました」

 

そう、クールジャパン！！キョー介さんはもちろん、数々のイラストレーターさんやアニメーターさんは日本の宝である。どうすれば待遇が良くなるのか・・・我々が何かできるわけではないが、まずはクリエイターファーストを実践していこうではないか。もしこの記事を日本の企業さんが読んでくれているなら、ぜひこうしたクリエイターを取り巻く実情も鑑みてもらいたい。

 

 

●キョー介

 

Twitter：@nitro_kyosuke

 

pixiv：https://www.pixiv.net/users/49340045

 

Follow @doujinworld